犬も歩けば猫に当たる2

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気が付けば人がうらやむ地位と名声と、財産を手に入れてしまった訳だが、それを天才の一言で片づけて欲しくはない。 イケメンだからとやっかむだけで卑屈になる知人などいらないと、笑顔を盾に広く浅い付き合いしかしてこなかった自分も自分だが、俺は自分を熱くさせてくれる事件と、手腕を存分に発揮出来るクライアントと、そして自分の内情をする少ない友人がいればいいと思っていた。 別に友人だって多くなくてもいい。 それがいなくても仕事には何の支障もなかったし、数少ないとは言え、俺の情けないところも全部知っている親友が1人いるからそれで事足りると言う訳で。 女の子なんてましてやその親友というカテゴリーにもなかなか入らない存在、あくまで自分にとってアクセサリーでしかなかった。ひどい話かもしれないけれど。 だからスマートな恋愛と後腐れない関係を好んでやってきたと公言していた本音は、そこまで恋愛、女性にのめり込んだ事もなければ、好意は持ってもそれ以上の感情を持ったことがなかったに尽きる。 不感症と言われれば反証に困るが、それが今までの俺の恋愛に関する価値観で、『彼女』に逢わなければ恐らく進行形な価値観だったと思う。 そんな不感症気味だった俺を変えてくれた出会いは、俺と名人の好奇心が結びつけた不思議な縁からだった。
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