犬も歩けば猫に当たる

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犬も歩けば猫に当たる

【another side】 「じゃあちょっと出て来るね」 爽やかに挨拶をしながら通り過ぎる度、あちこちから様々な外国語が飛び交う。 ここは『BLACK DOG lawyer's office』法律事務所だ。 だが法律事務所と言ってもグローバルに顧客を持つここでは、肌の色や言語の違いは何ら問題がない。むしろ日本語が話せない弁護士が多数在籍しているため、昼夜・国籍問わず様々な問題や顧客が舞い込んでくる。 仕事は完全個人主義、だけど困っている同僚がいたら手助けや協力も惜しまないと言ったアメリカと日本のいいところ取りをしたシステムが成り立っており、設備や環境もオシャレで最先端と申し分ない。 しかも事務所の立地条件は都心の一等地・高層ビルの上階と、これまた夢のような職場となれば、設立数年と歴史は浅いが、在籍する弁護士はどれも若く優秀な人材ばかりが集まり、こちらからヘッドハンティングをかけずとも、ここを憧れて転職や就職を希望する人は後を絶たなくなるのはある意味当然の環境なのかもしれない。 「いってらっしゃいませ、黒柴(くろしば)先生」 かく言うここの受付をやらせてもらっている私も、学んだ語学を活かせないかと就職先を探している途中でこの事務所に辿り着き、面接を受けた初日でここを第一本命にしてしまう程であった。 「うん。何かあったら連絡してね」 (いつ見てもスマートよね) と思うだけで顔には出さない。 仮にも相手はこの法律事務所の設立者にして事務所長、付け加えて言えば最年少で在籍している弁護士の1人ならなおさらの事。
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