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「失敬な、現に俺は副部長だ」
「そっちは本当だけどさ…じゃあ、まとめてよ、副部長」
そう言って吉井は、部室という名の資料準備室、という名の使われていない倉庫を見渡した。
スペースだけはやたらと広い部屋の中に、適当に並べられた長机とパイプ椅子。
備え付けられたキャビネットや棚の類は中身もカラのくせにがっちりと南京錠でロックされ、『てめえらの好きにさせるかよケケケ』と言わんばかりで物哀しさを感じさせる。
この部屋で唯一癒しの風景をもたらす窓に嵌められた鉄格子は、常々思うのだが、一体何の嫌がらせなのか。
さて、そんな『部室』の中には、現在自分と吉井を含めて5人の人間がいる。
一人は自前のノートパソコンのキーボードを無心で叩き、一人は部屋の隅で比喩ではなく大量の本に埋もれながら読書をし、一人は鬼気迫る表情でガリガリと音を立て散乱した机の上にある白紙の悪魔に絵と文字とで打ち倒さんと立ち向かっている。
その様子を一通り見つめて、ふむ、と溜め息。
「今日も我が部は平常営業だな」
「…せめて部活動としての異常性を認識しようよ」
「馬鹿お前、今日は5人居るとか奇跡に近いぞ。今改めて数えて二度見した」
「いや確かにそうだけどさ…ていうか本当だ。びっくりだね」
呆れる吉井ではあるが、しかしこれがこの部活動の本来の姿である。
もっとも、この部室を開いて一目でこれが何の部活動なのか分かる人間がいれば、それはかなりの慧眼の持ち主であろう。というか部活動だと認識できるだけでも尊敬に値するが。
実際の姿を見れば失笑すら漏れないようなこの部活動、この部室のプレートを見れば、こんな文字が書かれている。
――『総合文化研究部』
略して総研などと呼ぶ。なんのこっちゃ、と思うのが正常な反応。恐らくは文系の部活動である事は匂わせているし、事実文化部である事は間違いない。加えて言うなら、額面通りに文化について研究する部活動である事は確かである。
文化、と一言で言っても、その裾野は広い。
人間が営む全ての事柄に文化というモノは存在していると言っても過言ではない。その全てを総合的に研究するのは困難であり、また一つ一つを緻密に解き明かす事は不可能であろう。
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