第1章 1話

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やっと気づいてもらったのが嬉しかったのか、少女は立ち直り誠一に話しかけてきた。 「すみません、恥ずかしいところお見せして」 「大丈夫ですよ。気づいてなくて、ほとんど見てなかったですから」 「フグッ!フォローがフォローになってない・・・」 目の前には少女がいる。 歳は18ほどだろうか、金髪でポニーテール。 顔はとても整っており美人である。 美人なのだが、メンタルが弱くどこか残念な匂いがただよってくる。 再びこぼれそうになった涙を何とか堪え、少女は言葉を続けた。 「気を取り直して、沢辺誠一さん。あなたは幸運なことに見事、特賞が当たりました」 「あの、話を遮って悪いんだが、まず最初にここはどこなんだ?」 店のこともあるし、出来るだけ早く帰らないと。 さっきから言っている『特賞』が気になるが、まずは状況確認だ。 目の前の少女は俺の質問に嫌な顔せず答えてくれた。 「ここは誠一さんが分かりやすいように言うならば、あの世です」 「・・・はあッ!?」 一瞬、思考停止した。 あの世?一体、何を言ってるんだ。 からかっているのだろうか? そもそも何故俺の名前をこの少女は知っているんだ? 「それは心を読んだからですよ」 突然、少女が話しかけた。 それは普通ならば成立しない意味不明な文章。 だが、誠一と少女の間において、成り立っている、成り立ってしまうのだ。 混乱している俺に構わず少女は話を続ける。 「戸惑うのは仕方ありません。よくあることです」 そう言って区切り、真剣な顔で俺の目を真っ直ぐに見て、 「あなたは死んだんです。店の準備中に心臓発作で」 死んだ・・・死んだのか、俺は。 名も知らぬ少女の口から告げられた受け入れがたい真実己の死。 普通なら、何の冗談を、と笑い飛ばすであろうが、それが出来ない。 目の前に立つ少女の透き通った瞳が、誠一に虚偽等ではなく事実だと理解足らしめていた。 おい、そんな、そんなのって。 待てよ、ということは、ということは――― 「準備してた分の食材、全部パーじゃねえか!!」 男の心の叫びと共に少女がズッコケた。
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