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予想の斜め上を行く回答に思わず少女はずっこけてしまった。
誠一が良く動く子だなあ、と思っていると少女はガバッと立ち上がり誠一に問いただした。
「普通嘆くところそこですか!」
「バカ野郎!それ以外に何がある、常識だろ。しっかりしろよ」
「あれー!?私が間違ってるんですか」
「全くもお、食べ物を粗末にしちゃダメって、何時も言ってるでしょ!」
「何故にお母さん口調!?」
あれ??と頭を抱え混乱する少女。
間違っているのは完全に誠一の方なのだが、あまりにも自信たっぷりで言われたため自分の考えに自信が持てなくなってしまった。
そんな少女の反応を見て、なにげに少女をからかうのが楽しくなってきた誠一だが、このままだと先に進まないので切り出すことにした。
「つまり、俺は死んで、あの世に来ちまったってわけか」
「あ、はい、そうです。というか受け入れるんですね、亡くなられたこと」
「まあ結構な年だったし、死んだら死んだでしょうがないかなと。まあ、使えなかった食材が勿体無いがな」
「そ、そうですか。それと、こう言うのは変なんですが良い葬式でしたよ、常連客の皆さんが来て涙を流してましたから」
「そうか・・・そりゃ良かった」
長い間、経営していたため多くの常連客が食べに来てくれた。
案外俺は好かれたんだなと知り、不覚にも涙が出そうになった。
だが言葉はそこで終わらなかった。
「ただ、皆さん誠一さんにへと食材を持ってきて柩に入れたので、火葬の際に香ばしい匂いがしたと」
「・・・料理人冥利に尽きると考えよう」
生肉や魚まみれの自分を想像し、何とも言えない気持ちになる。
シュールすぎるだろう。
常連客は悲しくて泣いたのか、笑いすぎて泣いたのか分かんねえよ。
妙な空気になりつつある状況を変えるべく少女が話を続けた。
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