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最初の不機嫌はどこに行ったのやら、テンションを上げ、ノリが良くなってきたハナミ。
そんなハナミを見て、俺もノリに乗ることにした。
「異世界ってなんか不安だな?」
「大丈夫です、特典ではカタログの中から能力を5個も選べるんです。これであなたもチート野郎になれるんです!」
「でも、お高いんでしょ」
「安心してください、今ならなんとタダで神界が全てバックアップいたします!」
「おおー!……だが断る!」
ガクッとハナミが膝をつき落ち込んだ。
いや、断ったぐらいでそんな落ち込まんでも。
「えーーッ!?なんでですか、異世界ですよ!チートですよ!それでも男ですか」
「別に俺、料理にしか興味ねえし。ハーレム作るより、クレープとか作るほうが好きだし」
「乙女か!」
ツッコミ疲れたのかハナミがはぁはぁと息を吐き、気を悪くしたのか、体育座りをしブツブツと愚痴を言いだした。
まるでいじけた子供のような反応である。
「まったく、なんなんですかもう。異世界ですよ。ケモ耳にエルフですよ、剣と魔法ですよ。あっちの世界は美味しいもの少ないですけど、誰もが夢見る世界なんですよ。それを興味ないなんて、ブツブツ・・・」
やさぐれたハナミはネガティブなオーラを全開に放出している。
他の人が見たら誰もが避けて通るだろう。
だが、誠一はそんなことは気にせず、ハナミに話しかけた。
いや、気にすることが出来なかった。
「さっき何て言った」
「え、誰もが夢見る世界に興味ないって――」
「そっちじゃない、その前だ!」
「ヒッ!?美味しいものが少ないって言いました!」
なぜか鬼気迫った誠一に肩を掴まれて問いただされ、ハナミは慌てて答えた。
誠一はその言葉を噛み砕くように何度も反芻した。
そんな誠一を見守っていると突然口を開いた。
「やっぱり異世界に行くわ、俺」
「ほ、本当ですか。でも、いきなり何で?」
「俺は異世界に行く。そして...」
先程まで異世界に微塵も興味がなかった誠一。
この男の意志を変えたものとはいったい何なのか?
この男が異世界に行く目的とは何なのか?
それは―――
「そこで俺は店を開き、旨い料理を世界に広める!美味しいメシが無いなんて人生半分損してるようなもんじゃねえか!」
こうして料理好きの男、沢辺 誠一は異世界【ガルテア】に行くことになった。
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