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「貴様」
「はい」
端正な顔をこれでもかと近付けて、伍長は素直に返事をした。
が……いかんせん……
「ええいっ! 下ろせっ! 下ろせーっ!」
准将は叫んだ。
ジタバタ、ジタバタ。
足は前後左右に動く。
「可愛いから構いたくなるんです。自然の摂理です」
きっちりかっちり真面目に言い放たれ、准将はガクリと項垂れる。
これでは……私の威厳が……!
落ち込んでいても状況は一向に改善していない。
まるで赤子の顔を覗き込む母親のように、そして幼子を高い高いする為の前段階に入った父親のような構えで……
この伍長は! わわわ……私をっ!
床上、約1メートル辺りまで持ち上げているのだよっ!
ししし……失敬なっ!
まぁ、あんなにも大きなハンマーを軽々かつブンブンと振り回す男だ。
自身の身長半分以下に成り下がった私の両脇にがっちりと手を挿し込み、ひょいと抱え上げるなど造作もない事なのだろう。
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