第1章

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朝起きて、歯を磨いて、顔を洗って。 夜勤でいない母が炊いておいてくれたご飯と、適当に玉子焼きや野菜炒めなんかを作って。 朝ご飯を食べて、制服に着替えて、忘れ物が無いかチェックして。 ガスがちゃんと切れてるか、電気は消してるか、必要の無いコンセントは切れてるかを確認して。 鍵を掛けて出発。 どこにでもある様な普通の生活。 でも、私は普通じゃない。 学校までの通学路を歩きながら私は右目を掌で覆い隠した。 両目で見ていた時には何も無かった筈の空間に、ぼんやりとした人の姿が見える。 こちらには気付いていない様で、人通りの多い道路がある方を見つめたまま動かない。 女性の様で、短めのスカートと、ヒールの高そうな靴を履いている。 掌を右目から退かすと、ぼんやりとした女性の姿は消えた。 人通りの多い道路に出て、歩道の隅を歩きながら今度は左目を覆った。 丁度私の横を通り過ぎようとしていたサラリーマンが遥か彼方にいる。すれ違ったばかりのお婆さんの姿も、振り返るとかなり遠くにいた。 左目の手を退かすと、遥か向こうに歩いて行った筈のサラリーマンは私のすぐ前を歩き、すれ違ったお婆さんも私から3m位の後方で杖をつきながら歩いていた。 いつからか、これが私の日常になった。
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