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こうなってしまった以上はもうやけくそだった。俺は凛子の背中に腹を密着させてボールを支えていた手を凛子の手に重ねる。
―――そこで気づいてしまった。気づいてはいけないことに気づいてしまった。いやどうだろう、気づいて正解だったのかもしれないか。
最近いろいろありすぎてすっかり忘れかけていた。そうだ、凛子の手は俺の理想像そのものの美しい手をしていたんだ。そんな手でボールの球を、いくら一番軽い球とはいえ持たせるのはいいことなのか?
たった三本の指でこんな球を支えていいのか、初心者の凛子がもし間違った投げ方をして指を痛めたり、最悪折れたりなんてした時には発狂しかねないッ…!
「いいか凛子、俺が支えてやる。だから無理するな」
「はぅっ…!?た、太陽、耳元でそんな囁かないでちょうだいっ…!」
「我慢しろ、今だけは俺に身を委ねるんだ。大丈夫、俺がしっかりリードしてやるから」
「ひぅんっ…!」
(こっ、これ、優理に読まされた少女漫画と同じ展開…!何も知らないうぶな少女を優しくリードしてくれる男キャラと同じ言葉…!)
「いいか、そのままボールを後ろに運んで前に歩け」
「はいっ…!」
「投げるタイミング、ここで足を開いて腰を落として…」
「あっ…!」
「あとはボールを転がすイメージ、腕を真っ直ぐ振って……イけ!」
「っっ!」
「おっ、いいぞ!そのままイけ!イっちまえ!」
「あっ、あああ~~~~んっ!」
「おお!やったなストライクだ!」
「はぁっ、はぁっ、い、イけたわ…」
(何やってんのよこいつらッ…ボウリングでなんでこんなエロいのよッッ!!)
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