ちゃいるどとらぶる

5/7
前へ
/469ページ
次へ
もう何がなんだかわからないままに突っ走る。とにかくひたすら突っ走る。今ならそこらの陸上選手にも負けない速さで突っ走る。 夏氷や姉ちゃんだけでなく、優理先輩まで……一体全体どうなってるんだ!? ………いや、きっとこれはドッキリだ。夏氷と姉ちゃんと優理先輩の罠だ。俺の記憶にないのがその証拠だ!そうに違いない!ていうかそうでないとマジでヤバい!! 「………あっ」 「ふ、冬火…!」 偶然ばったりとあったのは肩にかからないくらいのショートの青い髪の少女、結田 冬火(ゆいだふゆか)だった。 冬火は俺の顔を見るや回れ右して歩き出してしまった。…それはまるで、俺を避けているような、俺から逃げるような風に見えた。 「ちょ、ふ、冬火…?」 「やめて」 冷たい言葉に息が喉元で詰まった。俺に背を向けたまま、冬火は声だけを俺に向ける。 「……わかってる。あんただけが悪いんじゃないって事は」 「………おい、なんの話だよ…?」 「惚けなくてもいいから。…あれは、雰囲気に流されちゃっただけで、私にも責任はあるから……」 「……ふ、冬火…さん…?」 「大丈夫」 そう言って、冬火は少しだけ顔をこちらに向けた。 横顔は赤く、目は潤み、口元に手を添えながら、小さな声でこう言った。 「成り行きだったけど、それでも私は……あの夜の事、忘れないから」 「………………………………………………………………………………………………………………………………………、あの、夜…」 「………優しくしてくれて、ありがと。……それじゃ」
/469ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1844人が本棚に入れています
本棚に追加