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「日本都市にはリベリオンの巣があるって話だ。上手く釣りだせれば、神子だって葬れるかも知れない」 「そんな周りくどい事をしなくても、おれなら皆殺しにできるっすけどね」 「でも、周りくどい事をしなければ無傷でいられない相手がいるよな。黒幕は、千載一遇のチャンスを掴めるように環境を整えた」 巨大となった組織と見劣りせず、強力な神子を退けられる可能性がこの街にはある――リベリオンという。 「神子には動機がある。それも飛びきり解りやすいのがさ」 神子の先には神を僭称する者がいる。 神子を束ねる神也。それを支える神也の武器。不思議能力で、持たざるものを蹂躙するトオルをすら御する天禀。 「神也さんにはおれ達の機能を殺す力があるっすからね」 対象の不思議能力の永続的な封印。それが神也が神子に嵌めた首輪だ。不思議能力……もう、異能でいいか。それがなければ、神子はただの人間だ。 「異能を盾に無理やり従わせることもできる。この時代にあって高度な秩序を保てている神託会の一員が好んで争いを生む動機足りえるのは、それぐらいしか思いつかない」 健全なる生を全うした先に救いがある。その思想が普遍的に浸透している以上、神子以外が狂乱者になるとも考えられない。 「はぁ。まさか、それだけでおれが黒幕って結論したんじゃないっすよね? まだまだ根拠が薄っぺらっすよ。昨日、前線に出ていない神子までは絞れたっすけど、それならヒロシも容疑者になるっすよね」 ここまでの条件から、表舞台から姿を消した最初の犠牲者も容疑者になる。けれど、その方法は両勢力を激突させて標的の命を奪うという方法をより迂遠にし、更に確実性に欠ける。 「日本都市勢力は俺の帰還によって現在地が割れてしまった。同じ方法はもう通じない。トオルの到来が避難をしても簡単に足跡を辿られることを証明している。これは、ピンチだ」 「いきなりどうしたんすか?」 「俺を処分した所で一時凌ぎにもならない。何故ならば、お前に他の人間を記録されればそれまでだからだ」 体育館を掌で示す。対象は選り取りみどり、あの中から一人を見繕って、トオルの胸中にだけその事実を秘めてしまえば、処分対象を見失う。 「逃走に活路はない。避難を選択しても、追いつかれる。ならば、散開するか? それはあまりにも愚策だ。食糧は枯渇する。精神は摩耗する。疑心暗鬼の檻に囚われて、いずれは悪夢が待っている」
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