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雨音さんが乗ってきたバイクを借りて東地区にとんぼ返りをして、自警団の団長の元に雨音さんから聞いた話を持っていった。 内容を大雑把に纏めると、こうだ。 とある集団が西地区を襲撃してきた。住民は西地区を放棄し、避難の為に東地区を目指している。 報告を受けて、団長さんは最優先で対応を進める。俺達、終活部もその手伝いに参加した。 この役割は雨音さんが果たすつもりだったらしいけど、雨音さんには避難民と合流して折衝役をして貰った方が良いと言う意見の一致があって、東側の自治組織に所属している月日さんと一緒に来た道を引き返している。 午後9時頃。東地区には西地区の100名強の住民が到着した。 -* 西の避難民に東側が提供した一時居住区は学校そのものだ。敷地内には購買もあり、インフラも充実している。布団や防寒具の類は、東の住人への説明のついでに集められるだけ集めてある。 あとの割り振りは西側の住人に一任して、団長さんは主要人物を詰め所に招集した。なんで俺まで? と思ったけど、いち早く且つ確実な情報を得られる好機だと思い直して、指摘しないことにする。 詰め所の中から窓の外を見ると、雨音さんが先ず折り目正しく頭を下げていた。相手は団長さんだ。 「突然の避難を好意的に受け入れて頂き、ありがとうございます」 「当然の事をしたまでです。何か不満等があれば、この腕章を付けた我々自警団の者に言って貰えれば、可能な限り対応します」 「此方にも何か出来る事があれば教えて下さい。お手伝い出来る事があれば、喜んで致します」 団長さんに促されて、雨音さんが詰め所に入ってくる。俺の姿を見つけると、雨音さんの表情が一瞬だけ凍る。
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