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これが俺達の置かれている状況。辿るかも知れない未来と末路。抵抗する以外に有り得ないと刷り込まれた今。 それがどうしたんだと嘯くトオルに俺は核心となる根拠を口にする。 「このシナリオで日本都市側に戦う理由を作れるのは、お前だけなんだよ。俺達に恣意的に神託会の理念を悪し様に伝えられるのも、此方で自由に動けるのも、そういう立場にあるトオルだけなんだ」 「それが、おれたちサイドの方針だから……ってのは、反論にならないっすね」 間諜として、対象の居場所を把握できるトオルは適任だ。その立場に違和感はない。だから、こうして公に俺と接している。 「その役割は便利だよな。神託会側にも、日本都市側にも、自分にとって都合のいい情報だけを与えられる」 「これまでの推理は何だったんすかね? それってつまり、最初からおれが黒幕だって決めつけてたんすよね」 「答えから逆算して理由を探したんだ。それが解ってなきゃ、利用できないだろ。お前だって、あっさりと本性を現さなかった筈だ」 それに、トオルが黒幕だとの確証までは無かった。最低でも、黒幕との繋がりか見解の一致があると思っていた程度だ。 第一線で情報収集に駆け回るトオルには確度の高い情報が集まる。 その情報はいずれ神也の耳に入るんだろうけど、その前に何者かの手によって歪められていた場合はトオルならその齟齬を修正する事は造作も無い。 でも、修正は行われずにこうして戦端が開かれている。 この事から、トオルは問題を意図的に放置したか主導で進行しているかの何方かだと仮定した。 本当の黒幕を炙り出す為に泳がせている可能性は、容疑者がトオルとヒロシの二名に絞られている以上はもうない。 「お前は大胆だけど、慎重だ。そうでなきゃ、大上に臆するような立ち回りはしなかった。別に大上に頭の中身を覗かれて、思惑が神也に知られても、敵の計略だと言い張ることも出来たのにな」 だから、それが決定打。トオルという男が俺の居場所を把握している事実さえ確認できれば、これまでの状況が扇動している者の存在を照らし出す。 「一概に失敗した、とも言えないっすね……おれがアテにしているのはリベリオンの戦力なんすけど、あんたには考えがあるんすか?」 ここまでリベリオンが沈黙を保ってる以上、俺達に犠牲が出るまでは膠着する。犠牲が出ても、どう転ぶか全く読めない。
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