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  雨音さんが一つ咳払いを入れて仕切りなおす。 「情報の裏付けを取った私達は話し合いの末、一度西を捨てて東に合流する事が堅実だと言う結論に至りました」 襲撃前に街を放棄したからこそ、西の住民は無傷で此方まで辿りつけたわけだ。 それにしても、避難じゃなくて合流か。そこまで想定してて、何が『安心した』だよ。まだまだ安堵なんてしてられないだろうが。 「ちょうどその頃です。セントラルの方角――東側に青白い光の大きな爆発が起こりました」 「我々はその現象を『大消失の光』と仮称している」 「言い得て妙、ですね。大消失の光は動揺を誘うものではありましたけど、爆音や振動で皆が起きて、そのおかげで周知の時間が短縮出来ました」 東は、あの光だけでもてんやわんやだったんだけど。西の住民はそれに加えて街――命の危機まで突き付けられたのに、調和の取れた避難が出来ていた。東側では考えられないな。 「準備時間を見て8時に街を出る予定でしたが、神託会に動きを感付かれてしまったのか、予定時刻になる直前に、高台で見張りをしていた者が遠方から迫る一団を発見しました」 ここからは俺達も知る通りだった。セントラルの視察に出た俺達と西側の窮状を伝える為に先行していた雨音さんが邂逅して、今に至る。 「あらましはこんなところ、かな……あっ、何か質問があればお答えします」 その言葉に、団長さんが開口する。 「避難の際にセントラルの付近を通ったと思う。今回の件と直接の関係はないだろうが、その周辺に異変は見られただろうか?」 それも看過できない問題の一つだった。 「どう、でしょう。移動で手一杯だったから、私はあんまり……二人はどう?」 雨音さんに帯同していた二人も横に首を振る。 「校舎に居る皆にも聞いてみますね」 一人が詰め所を出て行く。仕事が早い。 「宜しく頼む。それと、もう一つ。情報をリークしたと言う男について、詳しく聞きたい。その男は何故、君達に情報を与えたのか」 「神託会は各地の集落を襲撃、吸収して巨大化した組織だという話はしましたよね? 彼はその被害者の一人だと言っていました」 内部に潜り込んで被害を食い止めようとしているって事か? 胡散臭すぎて反吐が出る。
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