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  俺の内で高まる不満なんてつゆ知らず、トトは油まみれの手で俺の腕を掴んで無理やり身体を起こさせてから、とても凛々しい顔をして言った。 「行くぞ」 「何処にだ――いや、やっぱり説明しなくていい」 経験則で、トトがこんな顔をしている時は大体益体もない事を考えていると相場で決まっている。 「どうせまた更衣室(第二種人類用)とか、寝所に侵入しようって話だろ」 そう指摘すると、トトは呆れ返ったように侮蔑の眼差しを寄越した。 「あのな、ミッツマン。こんな時に、それはないだろ? 俺を侮りすぎだぜ」 「そうだよ、な。流石のトトでもTPOぐらいは解るよな」 「当たり前だ。だから……行くぞ」 皮肉を意に介さず、トトは部室を出て俺達も続くように促してくる。 「だからトト、何処に行くんだよ」 俺の質問に、トトは「決まってるだろ」と親指を担ぎ上げるように後方指し示す。 「女子シャワー室」 「なお悪くなってるぞ……バカな事を考えてないで、さっさとミーティングに入るぞ」 「バカはミッツマンの方だろーがッッッ!!」 怒涛の一喝。その大音声は夜の廊下に大きく木霊した。 「口で言ってもわからん奴には、現物を見てもらうのが一番早いぜ。ふくちゃん、頼む」 「ふくちゃんが協力するわけ――」 のそりと、死角から巨体が襲いかかってくる。 「――っく、また買収されたのか!?」 俺、あっという間に羽交い締め。バタバタと抵抗するも、圧倒的な力と不利な体勢の前に抜け出せる気がしない。 「今、西の連中と問題を起こすわけにはいかないんだ。考えなおせ!」 俺の必死の説得に、トトは満面の笑みを浮かべた。 「見つからなければ――いいんだ」 いいことなんてねーよばーかばーか! 「ふくちゃんなら、俺の言ってる意味が解るよな」 「パンはペンより強いんだな」 「問題にしたくないなら、静かにしてるといいぜ」 駄目だ、こいつら聞く耳どころかまともな思考回路を何処かに忘れてきてる。 「ミッツマン……見せてやるよ、この世の神秘って奴を」 俺は無慈悲にもグレイ型の宇宙人よろしく連行される事となった。
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