プロローグ

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  スマホのメールアプリを起動して、受信メールを読み返す。 当然、そこに部活に関する事で未知の知識は記されていない。 だよなぁと当たり前に納得してスマホをしまうと、不意にラジオのノイズに意味のある音が混ざり始めた。 「こんな時間にまで放送する事があるのか?」 ざざざ、ざっ。 『……の受け入……いします……っ、もう……』 放送はそれで終わる。ノイズの合間に何やら切羽詰まった声が聞こえた。一人二人の声じゃない。最低でも三色の声音はあった。 それだけで、俺は夜半の出来事に連続性を見出してしまう。 万事に備えて予測は必要だ。でも、無知のままでは確定しない無限の想像が不安を駆り立てる。 なら、すべき事は一つだった。 -* 一度校舎を離れ、自警団の詰め所を訪ねる。道中では腕章を付けていない数人の生徒とすれ違った。 こんな時間に、それも学校でわざわざラジオを聞いていたのは俺ぐらいなもんだと思うから、『大消失の光』について新情報を求めて行ったんだろう。 もし、ラジオの件でこの一体が騒がしくなる事があるとすれば、もう少し後になる。 プレハブの前には掲示板があり、そこには『大消失の光』について、セントラルの機能に問題がない事を明記した上で、詳しく調査していると締めくくられた張り紙があった。 どうやって、セントラルの機能に問題が無いことを知ったのか気にはなるけど、現在優先すべきはそっちじゃない。 「誰か居ないかー?」 網戸に向かって声を掛ける。程なくして、そこから知っている顔が出てきた。 「聞いた事のある声だと思ったら、君か」 精悍な顔付きをした男性。俺からすれば、最も都合の良い相手だった。 「おはようございます、団長さん」 この人は自警団の団長を務めていて、歳は俺より一つ上。以前、とある事件で協力関係になった事があり、お互いに面識があった。 自警団の誰よりも情報を持っている可能性があって、尚且つ性別が第一種。幸先が宜しい事だ。 「君も、あの光について情報を求めてやってきたのか? であれば、生憎そこに書かれている内容から進展はないが……」 「別件です。西の方から、何か特別な連絡を貰っていたりしませんか?」 「特別な連絡? 何故そんな事を?」 事情を掻い摘んで説明する。
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