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話を聞き終えた団長は、背後を振り返って俺以外の誰かに指示を出す。
メールが届いていないか確認してくれているようだ。ややあって、屋内から団長と比べると明らかに高い声が聞こえてきた。
「それらしいメールは届いていません。着信記録の方も確認しましたが、該当するものはありませんでした」
「そうか。ご苦労、月日」
第二種人類のソレに身を固くしていた俺だったけど、その苗字を聞いて少しだけ肩の力が緩んだ。
「聞こえていたと思うが、連絡のようなものは特に届いていない。そもそもの話、我々は向こう――西側と連絡を取り合っているわけではないんだ」
「え? 自警団同士、情報交換をしたりはしないんですか」
例えば、向こうで狂乱者が出て、捕らえられなかった場合は、此方に飛び火が来る可能性が大いに考えられるだろう。
『大消失の光』に関してだって、協調すれば調査の速度や精度も向上する。
「いや、そもそも大前提として」
しかし、次の団長の言葉に俺はそんな想像が見当外れも甚だしいものだったと理解させられた。
「西側には自警団のような組織は存在しない」
「存在しないのだから、手を結ぶも何もない……?」
そうなると、今度は別の疑問が出てくる。
「それじゃあ、誰かが狂乱者と化した時、西側の連中はどう対処しているんですか?」
終末の絶望に精神を蝕まれてしまった者の末路。理性のタガが外れ、害悪と成り下がった元人間の事をここでは『狂乱者』と呼んでいる。
「真偽の程は不明だが、西側では狂乱者が出ないらしいのだ」
西側には、そう言う人間が選別されている? いやいや。俺達がこっちに居るのは、そもそも俺達の選択だ。
たまたまこっちに来て、こっちに居着いてるに過ぎない。
狂乱者が出ない何かしらの理由があるのか、根も葉もない噂なのか――?
「狂乱者じゃなくても」
話を進める。
「混迷の時代を引き摺ったままの外敵への対策は必要ですよね?」
最近、西側に外部から狂乱者が現れた。そんな話を小耳に挟んだ記憶がある。
「それなんだが……」
「それなんだが?」
言い淀んだ団長の言葉の先を促すと、苦笑を零して「これも真偽の程は不明なんだが」と前置きした。
「西側には治安を守る正義の秘密組織がある……らしい」
なんだその胡散臭い組織は。
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