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東と西を結ぶ線の中央にあるセントラル。そちらまで向かうとなると、単純計算で倍の距離になる。
それに、セントラルに問題があった場合はどうするのだろう? 普通に考えると、対応策を練る為に直帰する事になりそうだ。
二人の様子から、今回は月日さんが一人で行くみたいだし――あれ?
「そう言えば、自警団の仕事中は基本的に二人一組での行動を義務付けられてるんですよね?」
「その通りなんだが、何処でその情報を?」
「見てれば判ります」
容疑者として嫌疑が掛けられている時に自警団の会話を盗み聞きした、なんて言えるか。
「今回は、特例なんです」
月日さんが団長の横に並ぶ。
「この間の事件で自警団に3名の欠員が出た為、私1人が浮く状況になりました。昨日までは、暫定的に他の組の補佐をしたり、団長と組んで動いていましたが……」
自警団が慢性的な人手不足にあるのは誰もが知る所だ。ただでさえそうなのに、人員の欠如なんて大きな痛手を負ったばかりで『大消失の光』か。
非常事態に備えて、組織の頭が拠点を離れるワケにはいかない。頭でっかちに原則に従っている場合じゃない。
「あの光の影響を詳らかにしなければ、住人の不安は拭えません。ですが、街の警備も軽視出来ません」
「それで月日さんに白羽の矢が立った、と」
「正直に告白しよう……それは大義名分だ。今現在においては、街の警備よりもセントラルの調査の優先度の方が高い」
安心が狂乱者を生み出さない事に繋がるなら、不安はその逆。
「我々は潜在的にあの光を恐れている。この街を守るという尊い志を持ってしても、それを克服するのは難しいのだ」
あの光がどういうものか目の当たりにしているなら、恐怖するのは仕方がない。それに、自警団が無報酬で活動している以上は献身の義務はない。
また光が発生するかも知れない。恐ろしい別の何かが待ち受けているかも知れない。そんな場所にすすんで行きたがる人が居るとすれば、それは自滅願望のある者か、自己犠牲精神の強い人だけだ。
「だから、月日さんに押し付けた?」
「それは違います。私が自ら志願しました。誰かがやらなければいけないなら、私が適任だと思いました」
適任じゃない。優先度が高いと言うなら、きちんと人を割いた方が効率的だ。
そう言おうと思った俺の機先を、月日さんの言葉が制した。
「誰でも良いなら、私で良いです」
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