プロローグ

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  脳内に問題点を列挙して、考えた末に俺は一つの結論に達した。 「少し時間が欲しいんだけど、いい?」 「それは、構いませんが……何をするんですか?」 「俺も着いて行くから、その為の準備をする」 結局の所、問題は人員不足の一点にある。セントラルの調査に名乗りを上げる者が居ないのなら、俺が代用になればいい。 「自警団は有志の集団だ。志ある者の協力を拒む事はしない。有難い申し出だが、良いのか?」 返答に窮する月日さんに変わって、団長さんが尋ねて来る。 「元々、俺が持ってきた事案でもあるし、それにここで手をこまねいているよりかは動いた方が建設的です」 現状、学校に留まっていても有意義な予定があるわけでもない。ネックなのは、月日さん――第二種人類(異性)と二人きりで行動する事ぐらいだ。 月日さんは俺の性質に一定の理解があるらしく、接しやすい部類に入る。だから、いい。 「誰でもいいなら、俺でも良いよな」 「土岐くん……ありがとうございます」 こうして、俺はセントラルの調査に協力する運びになった。 食糧を調達して、動き易い服装に着替えて、一応護身用の道具も携帯しておくか。 後は、駄菓子屋の諸々を部員の義務だとか言って友人2名に押し付けよう。 この時の俺は、想定外の事態が起きた時の非常要員程度に考えていた。 用意を済ませたら、月日さんと校門の前で合流する。現役バリバリそうなマウンテンバイクが2台置いてあった。 「これ、使っていいのか?」 「はい。これで行けば、2時間も掛からず最初の目的地に到着できると思います」 「道の状態は大丈夫なのか? 悪路を進んでパンクなんかしたら荷物になる」 だから俺は自前の自転車を確保していない。俺にとって自転車とは、そこら辺で拾って乗り捨てるものだからだ。大抵の物は、劣化が酷く、特に錆が著しいからロクにスピードが出ない。それに、うるさい。 「心配には及びません。セントラルは重要な施設ですから、そこまでの道は時々ではありますが整備をしています」 「俺達の知らない所で、自警団はそんな事までやってるのか……」 「西側も同じ事をしているみたいですから、セントラルを中継すれば少なくとも道の状態に不安材料は無いと思います」 他にも聞きたいことはあるけど、自転車についての不安は解消された。 残りの説明は道中でして貰おう。時間は沢山ある。
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