2-3

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-Another side- からん。ぽっかりと口を開けた暗影の奥からよれよれの兎の耳が出てくる。 「うぅ。やっと、開いたデス」 緩慢な動作で縁に腕を掛けると、呻き声を上げながら顔を出したのはラビィだった。 「随分と派手な自爆をしたっすねぇ。ほら、手貸すっすよ」 「貴方に借りを作るつもりはないデス……ややっ、なぜ龍が此処に居るデスか!?」 「それならもう手遅れっすね。このマンホールの蓋を退かしたのはおれっすから」 龍の視線の先には、兎を奈落の底に転落させた二人がこれでもかというほどに載せた重石の数々が無造作に散らばっている。 「んで、おれがここに居るのは、哀れな兎の案内人を焚き付けた責任を果たす為っすよ。つーことで、おれの気が変わらない内に」 「なるほど。解らないケド、解ったデス。一応、礼は言っておくデス」 兎が龍の手を握る。龍は微笑を浮かべて、その手を引いた。 「本当に、クソ哀れな兎っす」 「え――っ」 微笑は釣り上がり、弧月の形に歪んだ。その刹那、兎は猛スピードで走行するレーシングカーに突っ込まれたかのように、身体をくの字に曲げて、ビルの壁に激突する。 F5攻撃<アタック>を使う間も無かった。いや、龍の手を握ってしまった時には手遅れだったのだろう。 水路への落下に抗えなかったのは、兎の力では自らに掛かる慣性を殺すことは出来ないからだ。 「兎に相応しい末路を用意してやったんすから、遺言の礼はちゃんと受け取っておくっすよ」 呑気に大きな伸びをする龍の背後の一面には、鮮血の花が咲いていた。 -Side return-
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