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体育がある日はダルい。
特に暑い日はダルさも倍増だ。
「炎天下で体育ってどうよ?」
由紀ちゃんがブツブツ言い、わたしは笑いながらも、視線は佐藤くんを探している。
お互い体操着に着替えて、体育。
女子も男子も走りでタイムを記録。
わたしのもっとも苦手な部類だ。
佐藤くんは足が速くて、羨ましい。
長い脚も、羨ましい。
ほどよくついた筋肉も、羨ましい。
「美夏~さっきから佐藤観賞会か?」
耳元でボソボソと言われ、思わず抗議する。
「由紀ちゃん~」
「ハイハイすみませーん」
「佐藤に木村! そこ遊んでないで走れ!」
先生に見咎められ、ふたりして走る。
「由紀ちゃん、先に行ってていいよ。わたしのペースで走るから」
「了解」
笛がなり、わたしたちは走り出した。炎天下の走りはキツイ。
でも、最後まで走りたい。
由紀ちゃんは部活の走りこみのおかげか、はるか彼方に行ってしまった。
わたしはもくもくと走る。
あと少しで終わりというところで、わたしは転んでしまった。
「痛ッ」
「美夏!」
とっくに走り終えてた由紀ちゃんが慌てて駆け寄り、先生も「大丈夫か」と近くに来た。
立ち上がって、大丈夫ですと言おうとした時、足首が痛んだ。
「痛い」
わたしの言葉に先生が足を触ろうとした時、佐藤くんの手がヌッとでできて、先生より先にわたしの足に触れた。
「捻った?」
先生に向かって佐藤くんは、
「オレ、保健室連れてきます」
わたしをゆっくり立たせると、
「歩ける?」
と、聞いてくるので思わず頷いてしまった。
「先生、いいですよね」
佐藤くんの言葉には有無を言わさない迫力があって、先生も戸惑うように頷いていた。
「頼めるか」
「はい」
佐藤くんはわたしに向かって
「腕かすから捕まっていいよ」
って言うから、躊躇いながらも捕まらせてもらいながら歩いた。
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