第1章

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「は? 佐藤に送ってもらう」 由紀ちゃんが保健室から帰ってきたなり、そうゆう事になったと伝えると、ニヤリとされた。 「やるな美夏。ついに告白~」 「違います。佐藤くんは親切心で、わたしはそれに甘えたの」 「ほほぅ、甘えたのか~」 由紀ちゃんの言葉に顔が熱くなる。いじわる由紀ちゃん。 プイって横を向くと、由紀ちゃんは頭を撫で撫でして、ごめんごめんと謝ってきた。 「ふたりで帰るのか。恋が進展する事を祈る」 「しないよ」 「わからないぞ」 と、その時、教室の入口にカバンを持った佐藤くんの姿。 「佐藤、帰るぞ」 「あ、はい」 言いながらわたしの顔は真っ赤に染まっている。だって、足首と同じくらい頬が熱い。 「気をつけてな~ 佐藤、美夏をよろしくお願い」 「おまえによろしくお願いされなくても、ちゃんと送るって」 「だって」 由紀ちゃんがウィンクしてくる。 わたしはカバンをもって、 由紀ちゃんに「またね」と手を振った。 佐藤くんの側にいくと、手を出されカバンと催促された。 どうやらカバンを持ってくれるらしい。 遠慮しよと思ったところに、佐藤くんの申し出。 「好意は素直に受け取るべし」 「ウッ…お願いします」 「よし」 自転車置き場まであるけるか不安だったが、佐藤くんに抜かりはなく、先に行ってとってきたらしい自転車を。 「ありがとう」 前カゴにカバンがふたつ。大きな荷物になってしまった。 「後ろに座れるか?」 「大丈夫」 わたしは脚を揃えて横に座って、体は前を向いた。 「佐藤おれのウエストにつかまれよ」 「へ?」 「危ないだろうが」 「でも」 「でもじゃない」 「ハイ」 おそるおそる佐藤くんのウエストに両手を添える。 「佐藤しっかり捕まってろよ。ま、安全運転するけど」 「ハイ」 思わず声が裏返る。 くつくつと佐藤くんの笑い声が響いて、なんだか真っ赤うえにくすぐったい気分だった。 「じゃ、出発するぞ」 佐藤くんの声で自転車は走り出した。
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