第1章

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ある日の放課後、親友の由紀ちゃんからアイスを食べようと提案があった。 「部活、今日は休みだし息抜きしたいわ。っていうことで付き合え美夏」 由紀ちゃんは、けしてわたしのことをトマトちゃんとは言わない。 わたしが気にしてるのを知ってるから。 「なに食べたいの?」 聞けば響くように答えが返ってくる。 「バニラアイス、バニラアイス、バニラアイス」 「あはは。わかった」 「我が友よ。感謝」 「大げさだよ、由紀ちゃん」 わたしたちが笑いながら話しをしてると、佐藤くんがクスッと笑って言った。 「アイスひとつで大げさなんだよ。おまえら」 「なんだと佐藤! アイスはおいしいし美夏は可愛いし、いいだろうが」 「なんでそこに佐藤がでるんだよ」 言われて、わたしの顔は真っ赤に染まる。 由紀ちゃんは偉そうに 「事実を言ったまでよ」 言い切り、ふんぞり返った。 「わかった。佐藤もわたしらと一緒にアイスが食べたいんだな」 どきりとするわたしの鼓動。 「特別に供をゆるす。ついて参れ」 「はぁ、なに仕切ってんだよ木村」 「おごってやると言ってるのにか」 「マジか?」 「マジだ」 「行く」 由紀ちゃんの背中には勝利の字が見えた。佐藤くんの顔は素直に笑っていた。 わたしも由紀ちゃんみたく佐藤くんと喋りたいなぁなんて思ってたら、由紀ちゃんに眼差しで褒めてとサインされた。 由紀ちゃんは、わたしが佐藤くんを好きだと知ってるから。 佐藤くんが一緒にアイスを食べに行くよう仕向けたことに、グッジョブが欲しいらしい。 わたしは由紀ちゃんにニッコリ笑顔。 それを佐藤くんも見たらしく、 「佐藤って笑えるじゃん」 言ってきた。 途端にわたしは顔真っ赤。 佐藤くんはそんなわたしを見て、 「いつも顔真っ赤だよな、おまえ」 地雷を踏んできた。 好きで顔が熱くなるんじゃないのに……。 「佐藤、美夏を困らせるなよ。この子は極度の恥ずかしがりやなだけなんだから」 と、由紀ちゃんがフォローをいれる。 「そんなの知ってる」 佐藤くんの言葉に、気づけばわたしも由紀ちゃんもあんぐり口を開けていた。 佐藤くんはバツが悪くなったように、自分の髪を片手でくしゃりとすると、由紀ちゃんに向かって 「アイス奢ってくれるんだろう」 話しをそらした。
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