第1章

5/16
前へ
/16ページ
次へ
わたしのクラスの席順は自由で、人気の後ろは競争率が高い。 私は親友の由紀ちゃんのおかげで、毎回、後ろの席を死守できてるわけで、持つべきものは出来る親友。 由紀ちゃんはそれだけでない。佐藤くんが見える絶妙な位置の席を確保してくれる。 私は由紀ちゃんに感謝しっぱなしだ。 由紀ちゃんからすれば、私はオアシスなんだそう。言いたいことも言え、ちゃんと自分の言葉を聞いてくれる。 私は友達なんだから当然だと思うが、個性の強い由紀ちゃんからすると女子同士でも色々あるらしい。 帰宅部のわたしにはわからない世界なのかもしれない。 今日も授業の内容をノートに書きながら、佐藤くんを見つめる。 一番後ろの席から、ななめ三つ目前が佐藤くんの席だ。 髪サラサラだなぁとか思って、見ている自分が恥ずかしくなって顔が赤くなる。 もう二年間も佐藤くんの事が好きで、由紀ちゃんに言わせると告白してこいだけど、そんな勇気ない。 はぁ 「なにため息ついとるか、佐藤美夏」 げっ! 先生に見られてたの!? みんなの視線が集中するなか、佐藤くんの視線も感じて顔が真っ赤になる。 「来年は受験生なんだからお前らもしっかりするように」     途端、クラスから不平の声があがる。 私は真っ赤になった顔を両手で隠すようにして、なんとかこの騒ぎをやりすごした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加