第1章

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「美夏、さっきの気にしなくていいからね」 授業が終わるとまっさきに由紀ちゃんがやってきて、慰めにきてくれた。 「うん」 由紀は小声で 「佐藤に見とれてたでしょ」 ストライクの言葉を言う。 わたしは顔を真っ赤にしてそれを肯定してしまう。 「うんうん。青春してますな」 「由紀ちゃん!」 「ハイハイごめんなさい」 由紀ちゃんは舌をペロリと出して謝った。 「でもさ、見てるだけでいいの?」 「うん。見てるだけで精一杯なんだ」 「いじらしいのぅ」 由紀ちゃんは抱きついてきて、頭を撫で撫でしてくれる。くすぐったくて自然と笑みがもれる。 そんなわたしの姿を佐藤くんが見ているなんて、この時のわたしは知りもしなかった。
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