第1章

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世界史室からの帰り道、佐藤くんが言った。 「おまえ木村となら笑うんだな」 「え?」 意外な言葉に黙ってると、佐藤くんはオレンジジュースを片手に、 「オレの前でも笑ってみせろよ」 と、言った。 言われてる意味を理解するまで数秒。 わたしは全身が真っ赤になってるんじゃないかっていうくらい、身体が熱くなった。 「だ、だから」 佐藤くんと二人きりの廊下で、佐藤くんに言われた言葉が、わたしをトマトちゃんにする。 「あーなに言ってるんだか、オレ」 佐藤くんを見ると佐藤くんも真っ赤な顔をしていて、ふたりで真っ赤になりながら廊下に立ちつくしてた。 「おまえの真っ赤になってる顔もいいけど、笑ってる姿もいいんだよ。だから」 佐藤くんは意を決したように、もう一度、同じ言葉を繰り返した。 「オレの前でも笑ってみせろよ」 由紀ちゃん、こういう時、どうすればいいの? わからないまま、わたしは佐藤くんに向かって 「うん」 と頷いた。
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