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『もう大丈夫だよ』
わたしが先ほどまで見下ろしていた顔が今度はわたしを見下ろしている。
『水が怖いの?それとも、高いところが怖いの?』
『……高所恐怖症なんです』
高所恐怖症なのになんで飛び込もうとしたのか、と呆れられるかと思いきや、その人はわたしをプールの縁に座らせるとわたしの頭を撫でた。
『そっか。じゃあ君は、今日ありったけの勇気を出したんだね』
がんばったね。
色香を漂わせるその人は、そう言って笑った。
わたしの目から涙が、堰を切ったように溢れて、とめどなく流れていった。
自然と声もなく、ただ涙の溢れるのを感じていた。
その人はひょいとプールから上がると、再びわたしを抱き上げて、救護室へと連れていった。
~…………~
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