春岡さんがしゃべった!

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◆  6時間目が始まる直前、春岡さんが僕の席の方へとスタスタ歩いて来る。 (まさか、まさか……!?)  ああ、間違いない! 僕の前で立ち止まる春岡さん。  甘い爽やかな香りが、長い黒髪からふわっと舞い上がる。 「は、春岡さん?」  期待に胸おどらせ、春岡さんの美しい赤いくちびるが、動くのを見た。 「こ、幸山君」  春岡さんがしゃべった!!  聴き取れるか聴き取れないか、分からないほどの小さなウィスパー・ボイス。 (ああ、さしずめ森の野鳥ジョウビタキの美しいさえずりの様だ!!) 「ど、どうしたの? 春岡さん。  もし、言いづらいことだったら、あっちの窓際の方に行こうか?  春岡さん、いつも窓の外ばかり見てるよね。青空とかひこうき雲とか大好きなのかな? ハハハ……僕も綺麗な風景は大好きなんだ」 (頑張れ! 僕!! 落ち着け、僕!!)  僕は大昔の映画に出て来るイカした船乗りの様に、上半身を窓枠に乗り出し、首を開いている窓から出して、眩しげに空を見上げるナイスなポーズをとった。  春岡さんは、ほんのちょっと後ずさりして、小さくつぶやく。 
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