第1章

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取り敢えずこう答えておこうか。 「オレの事好きか?」 これなら会話を逸らす事が出来るだろう。そしてそのまま話を変える。 「えっ?」 歩はビックリした後、もじもじし始めた。どうやら効果はあるようだ。 それも仕方ない。急に自分の事好きかと訊かれたら誰でも驚き恥じらう。とは言ってもそれなりの親密度は必要だけど。 「そ、それは……その…」 よし、これで話を変える事が出来るのは確定した。 「好き……だよ…」 うん、思ったどおりの反応が来た。 「オレも好きだ」 オレは最近まで歩の事が好きなのかどうかが分からなかったが、つい先日そうだと気付いた。だから普通にそう答える事が出来るようになった今、これは大きな進歩だと思う。 「はう……」 更にもじもじし始める歩。これはかなりの効果があったようだ。だがこれ以上好意を知らせるわけにはいかない。 「という事でオレは二度寝するから、もう部屋から出て行ってくれ」 「う、うん……」 歩は頬を赤くしながら無言で部屋の扉まで向かい、扉を開ける。 「じゃあ10時に駅前で待ち合わせね!」 畜生、覚えていたか! 「ああ、分かった」
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