第1章

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屋上から見る初夏の空はどこまでも青くて、入道雲がもこもこと覆っている。 空は目に痛いほど青いくせに、雲は子供がクレヨンで塗り重ねたみたいに真っ白で、そのくっきりはっきりとした境界線に私はわけもなく惹かれた。 「幽霊なんだ」 隣で一緒に空を見上げていた奥間がぽつりと呟いた。 普段可笑しいくらいに無口な彼が放った言葉は、強い夏の風に吹かれて吹き飛んでしまいそうだった。 「ふうん、誰が」 「…俺が」 幽霊なんだ、ともう一度呟いて、青い金網にガシャンと背を預けた。 私が奥間と会ったのは入学式の春だから、半年くらい前か。 人と一緒に食べる食事が嫌いだった。 何故そこまで親しくもない女子と、好きでもない芸能人の話や、興味のないファッションの話や、下らない恋物語をかたらなくてはいけないのだ! 別に人が嫌いだったわけではないけれど、そうして食事を付き合いとして見ることが嫌だった。 だから私は一人の場所を探し求めて、最終的にこの屋上にたどり着いた。 開け放されてはいるものの、薄暗い雰囲気が人を近寄らせないそこは、私の一人飯には最適の場所だった。 初めてそこに行った日も、奥間は居た。 屋上の端っこで空を眺めて一人ぼっちで。 「どうしたの」 「…!……」 声をかけたら酷く驚いた顔をされたけど、結局は会釈をされただけで終わった。 私は無言でご飯を食べた。
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