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「ずるい人、です。」
扉を開けて、僕が愛里ちゃんから言われた言葉は非難だった。
いつもは…挨拶なのに…何があった?
プイっと顔を背け、曽根さんの元にいく彼女は…少しだけ辛そうに
「アタシは…酷いヤツ…。」
小さく呟いた。
よく解らないが…彼女の中で何か大きな変化が起きたみたいだ。
曽根さんの同居人としか思われてなかったはずなのに…。
僕はまたコーヒーを淹れる。
どうやら…僕のこのドロドロした中身が彼女にバレてしまったみたいだ。
クスッ…
面白いな…夜の曽根さんを彼女が知ったら…。
イヤ…ダメだな…
「一つぐらい…僕が手に入れてたって良いよね…。」
僕はお喋りな手の踊りと軽やかな笑い声を遠くで感じながら…
カップにコーヒーを注いだ。
途中まで持っていくと…いつものように愛里ちゃんがカップを受け取り、
曽根さんに渡す。
「美味いな…。」
一口飲んで、美味いというのもいつものこと。
ただ…いつもと違うのは愛里ちゃんが悔しそうな顔をしていたこと。
でも…僕にはもうすぐ関係なくなる…。
もう少しで曽根さんは僕から解放される…。
「それまでは…君には渡さない…。」
誰にも聞こえないように、小さく呟いた。
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