169人が本棚に入れています
本棚に追加
呟きと共にしなやかな指先が…手が…僕の髪をクシャリと撫でた。
あの頃と同じ…違う…あの頃の手だ…
あの人のほんの少しだけ…緩んだ口元がまるで微笑んでいるようで…
それだけで、僕の心は跳ね上がった。
「よく頑張ったな…。きっと…綺麗な音がする。」
そう言って愛おしそうに繊細な手つきで
部品を僕に返した。
僕は、曽根さんの瞳を見つめながら…
「ありがとうございます…。
これから組み立てて、この箱の中に入れようと思うので、3日後…祖父に聞かせてあげたい…。」
曽根さんは、小さく頷き…
良いんじゃないか…と呟いた。
曽根さんは、散歩に行くと僕に声をかけ…扉を開けようとしたところで
僕にその腕を掴まれた。
「お願いです…3日後…僕と祖父に会ってください。」
曽根さんの目を見て、ゆっくりと伝えれば…戸惑ったように瞳がおよいだ。
掴んだ腕が微かに震えている…。
「…怖いですか…祖父に会うのは…。」
「あっ…。」
僕がその頬に手を添えると…ビクッと跳ねる。
僕はその身体を抱き込んで…
「会ってください…最後に…。」
大丈夫ですと…唇に触れる。
もう…祖父は、僕も貴方も解らないから。
最初のコメントを投稿しよう!