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様子がおかしい…。
夜のあの子は、飢えた獣の様に俺を追い詰めて、
抵抗も懇願も…
あの子の嗜虐心を煽るだけだった。
なのに…
今日は…
まるで無垢な花嫁に触れるように…
優しく
愛しく
大切だと全身で伝えてくるようだ。
止めてくれ…
これは復讐だろう?
どうして…
俺を傷付ける為だろう?
優しく抱きしめないでくれ…
口付けが甘く感じるなんて…
勘違いしてしまう…
許されていると
愛されていると
勘違いしてしまう。
あの子はいつも…俺を後ろから抱きしめ、囁く。
何度も…何度も…
「…。」
「…。」
囁く言葉が…怖くて聞けない…。
これ以上…
責め苦は無理だ…
これ以上は…
心がもたない…
けれど…
あの子は、俺に…向き合わせる…。
この耳が…
最後に聞いた声と…向き合わせる。
「人殺し!お前が…お前さえいなければ…この人殺し!」
その声の主と
対面する事が…俺の贖罪だと
あの子が告げる。
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