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まだ…暖かい祖父の手を握りしめ
「おじいちゃん…これで…安心できた?最後に…聴けた?」
そう語りかけた。
色んな感情すらも消えていたはずなのに…
祖父の顔は不思議と満足そうな…安堵したような…安らかな顔だった。
「ありがとう…みんなにあったら…僕は元気だよって伝えてね。」
祖父に最後の挨拶を済ませると、お世話になった先生方にも挨拶を済ませ…
僕はひっそりと1人で祖父を送り出した。
お通夜も葬式もない祖父との別れはあっけなく終わり。
僕の手の中には…祖父だったものの欠片が残された。
家は…とうに売った。
大学も…辞めた。
そうして…僕の中に残ったものは…案外に少なくて…。
それ故に、捨てきれないものだった。
「よろしくお願いします。納骨日にはまた伺います。」
家族の眠るお寺に祖父の欠片を預けて…
僕は鞄一つとトランクケースを持って、バスに乗り込んだ。
駅に向かう道のりの中…曽根さんの家の屋根が見えた。
「あっ…。」
それだけで、曽根さんに会いたくなる。抱きしめて…キスしたい…。
「もう…出来ないけど…。」
さようなら…曽根さん…。
ごめんなさい…多分ずっと愛してる。
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