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バスと電車とバスを乗り継ぎ…山と緑と畑しかない場所に降り立った。
「空気がいいな…。」
バス停から15分くらい歩くと…ログハウスが見えてきた。
ここが新しい僕の住まい。
あの街を離れる決心をしたのは…愛里ちゃんのおかげかもしれない。
あのままだったら僕は曽根さんを壊してしまった。
曽根さんが愛里ちゃんを愛したから…
僕は…この場所で新しい生き方をする事ができる。
住み込みの木工工房の仕事を見つけたのは偶然。
僕のオルゴール用の箱を入れた就職希望の用紙は…すぐに採用の電話を届けてくれた。
「これから、よろしくお願いします。」
明るい工房には、穏やかなご夫婦がいた。
案内された僕の部屋で一番最初にした事は…
螺鈿細工の箱を出窓の中央に置いた事だった。
「綺麗な箱ね…。」
奥さんがその箱をうっとりと眺めた。
僕は…嬉しくて…
「僕の宝物です。」
この箱の中に曽根さんとの全てを閉じ込めた。
全てを閉じ込めて…新しい生活が始まった。
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