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何が起こったのか…理解できなかった。
哲人の祖父の病室から出された俺は…引きずられるように、
恵先生の家に連れて行かれた。
理解できていないのは俺1人で…。
恵先生と愛里ちゃんは全てを受け入れて理解しているようだった。
きちんと説明するから…と恵先生は俺を椅子に座らせ、俺の目を見た。
そして…ゆっくりと口を動かす。
「哲人君がね…曽根君がピアノを弾き始めた頃に…ふらっとうちに来たの。」
恵先生はそう言って話し始めた。
あれは…雨が降っていた日。
傘もささずにやって来た哲人君はびしょ濡れだった。
どうしたの?風邪を引いてしまうわ…と
急いでタオルで濡れた体を拭くと…哲人君は、突然…
出ていこうと思いますって言ったの。
突然で何がなんだか解らなかったわ。
だって、哲人君はあなたの事が大好きだったもの。
「俺の…事が…好き…?」
恵先生はふふっと笑って、
あなたの事を恋する瞳でずっと見ていたじゃない。
気づかなかった?
私はね…ずっとあなた達が2人でやって行くんだと思ってた。
あぁ…あの頃の…あなた達が還って来るんだって
ちょっと嬉しかったの。
『アタシが横恋慕したんだ…。』
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