第5章

7/11
前へ
/146ページ
次へ
何が起こったのか…理解できなかった。 哲人の祖父の病室から出された俺は…引きずられるように、 恵先生の家に連れて行かれた。 理解できていないのは俺1人で…。 恵先生と愛里ちゃんは全てを受け入れて理解しているようだった。 きちんと説明するから…と恵先生は俺を椅子に座らせ、俺の目を見た。 そして…ゆっくりと口を動かす。 「哲人君がね…曽根君がピアノを弾き始めた頃に…ふらっとうちに来たの。」 恵先生はそう言って話し始めた。 あれは…雨が降っていた日。 傘もささずにやって来た哲人君はびしょ濡れだった。 どうしたの?風邪を引いてしまうわ…と 急いでタオルで濡れた体を拭くと…哲人君は、突然… 出ていこうと思いますって言ったの。 突然で何がなんだか解らなかったわ。 だって、哲人君はあなたの事が大好きだったもの。 「俺の…事が…好き…?」 恵先生はふふっと笑って、 あなたの事を恋する瞳でずっと見ていたじゃない。 気づかなかった? 私はね…ずっとあなた達が2人でやって行くんだと思ってた。 あぁ…あの頃の…あなた達が還って来るんだって ちょっと嬉しかったの。 『アタシが横恋慕したんだ…。』
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

169人が本棚に入れています
本棚に追加