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恵先生と再会した次の日
僕は…もらった住所を頼りに曽根さんの家をを訪ねた。
レンガ造りの家には、ヨーロッパ風の看板がかけられており
そこには
【曽根オルゴール工房】
と書かれていた。
古めかしい扉に【Open】の文字…
僕は…ごめんくださいと扉を開くと、部屋の奥のライトが点滅していた。
奥から人影が見えてくる…
僕は…その姿が見えるのを高鳴る心臓とともに待ちわびた。
現れたのは…
冷たく美しい顔立ちにメガネと顎鬚のある暗い瞳をした男性だった。
昔から美しい人だった…けれど…いつも暖かく優しい眼差しで微笑んでいたあの人とは思えない、無表情さだった。
「いらっしゃいませ…どの様なオルゴールをお探しですか?」
一音一音を確認する様にゆっくりと話す、チェロの音のように甘く響く声に感情はみえず。
さりとて、視線は僕から外れることはない。
その男は、感情の見えないガラスの様な瞳で僕をじっと見つめるのだった。
「務兄ちゃん僕だよ…お願いします。僕とおじいちゃんにトロメライを弾いてください。」
昔と同じ口調で僕の願いを口にすれば… たった一言で切り捨てられた。
「断る。」
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