第1章

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
あんなヤツのどこが良いの? よくそう聞かれる。 あいつはズボラでオシャレにだってまるで興味がない。 優柔不断で行動力も無い。 お金持ちってわけでも無いし、とりわけ頭が良いわけでもない。 そのうえ無口で無表情。 唯一の救いは、平均よりはほんの少しだけ顔が良いところ。 それでも、イケメンって言えるレベルじゃあ決してない。 考えてみればアタシ、なんであいつのこと好きなんだろ。 それはきっと高校生の時。 アタシは当時付き合ってた男の子にフラれた。 大好きで大好きで。 猛アタックしてようやく付き合えたのに。 すぐにフラれてスゴいヘコんでた。 ショックでショックで。 その日は家に帰る気力すらなくて。 放課後の教室でずっと泣いてたっけ。 そしたら居残りかなんかでいたあいつがたまたま教室に入ってきた。 泣いてるアタシ見て「どうした?」って顔するわけ。 正直聞いてくれるなら誰でも良かった。 だからアタシ、わんわん泣きながら思い切りアイツにぶちまけた。 アタシが喋ってる間もあいつ、一言も喋らないの。 信じられる? 相槌もうたないし、頷きもしないの。 話を聞くのも下手クソなの。 でね。 洗いざらい思いの丈をぶちまけた後にアタシ聞いてみたの。 「アタシ重いかな?メンドくさいかな?」 って。 そしたらあいつ、なんて言ったと思う? 無口なあいつがボソッと一言。 「オレはマコのそういうの、好きだけどな。」 って。 アタシびっくりしちゃってさ。 いっぺんに泣きやんじゃった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!