2人が本棚に入れています
本棚に追加
温かい…………
全身は鉛のように重く、焼けつくような熱を帯びている。
なのにも関わらず、胸の辺りだけが仄かに、温もりを感じている。
それは、明らかに身体から発されている熟々とした熱とは違う。
張り詰めていた心が…………
融かされていく…………
だが、何故そのように張り詰めていたのか、身体が云うことをきかない程に重くなってしまったのか――――――それが解せない。
思考の回転は再開され、自身が今この時を生き、体内に血脈が流れている事すら実感しているというのに。
何がどうなって今があるのか、前後の記憶が微塵も呼び起こせない。
そればかりか、今が何時で、己が何者であるかすら、曖昧だ。
思い出そう、考えよう、とする心持ちを深い闇が覆い被さるように妨げる。
今解るのはただ一つ――――――――
温かい…………
のし掛かる闇は、暗く深く、けれど安らかで―――――全て投げ出して、身を任せてしまいたいと感じる闇だった。
それでも、その意に反して、何かに駆られ僅かに目蓋が開いた。
暗雲に微かな切れ目が出来たかのように、霞がかった視界が開ける。
最初のコメントを投稿しよう!