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 映ったのは翡翠色に透き通った柔らかな光。  あぁ、これが温もりを与えてくれていたのだと、反射的に理解する。  しかしそれが何から発されているものかまでは分からない。  今まで目にした事のない神々しい光だった。 「大丈夫……」  光源を確認しようと、更に重い目蓋を切り開かんとすれば、どこからか声が聴こえた。  幼さのある、どこまでも優しい声。  その人物が俺に温もりを、癒しを施してくれているのだと理解する。 「……あ……………」  ただ一言、礼を伝えたかっただけなのに、唇から漏れたのは掠れた言葉にすらならぬ声だった。 「……もう大丈夫ですから。今はゆっくり休んで……」  優しい声は、そんな情けない俺を包み込むように、どこまでも穏やかにそう囁いた。  あぁ、温かい…………  俺はそれ以上視ることを、識ることを諦め闇に身を任せた。  微かに見えた光の主は、優しく柔らかで――――――――まるで古の仙女のように見えた。 *
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