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村に残してきた母を見捨て、氷青様に報いる事も出来ず、父の名に泥を塗って、見ず知らずの男に情けをかけるために………………。
「ならば致し方無い。……お前が忠誠を示せぬと言うならばお前の妻に示してもらうまでよ」
「っ!?」
意を決して反論した男に、冷たく賊の一人が言い放つ。
「そうだな。多少年老いてはいるが、女には変わり無い」
下卑た笑みを浮かべ、もう一人の賊も同調すれば、農民風の男の蒼かった顔は青を通り越して白くなっていく。
そうか、妻を人質にとられているのか…………
痛みで朦朧とした頭は、どこか冷静にやっと彼等の関係性を理解した。
俺には、まだやるべきことがある。幾ら打ちのめされようと、鍛えた体はまだ動く。
だが、だが…………それでも逃げ出せない。
震えと汗で何度か取り落としそうになりながらも、男は木片を抱き抱えるように構えた。
「うああああああ……………………!!」
嗚咽と悲鳴が入り交じった雄叫びと共に木片が降り下ろされる。
ガッ!!
木片が頭部へと食い込む瞬間、舌を噛む事は避けたが、意識は保ちきれなかった―――――。
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