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そうして件との握手のために一旦しゃがんでいたのを立ち上がり、不機嫌そうに聞いてもいない事を喋りだす。
「令、件はな、古くから日本各地で知られる妖怪なんだ。その名の通り、半人半牛の姿をした怪物として有名だな。多くは牛の身体に人の顔を持つ姿で産まれてきていたんだが、第二次世界大戦頃からは、人間の体と牛の頭部を持つものもいたとか言われている。因みにだ。幕末頃に最も広まった伝承からは、牛から産まれて人間の言葉を話すのが主流で、更には産まれて数日で死ぬが、その間に作物の豊凶や流行病、旱魃、戦争など重大なことに関して様々な予言をし、それは間違いなく起こる事とおそれられてもいたんだよ。その事から件の絵姿は、厄除招福の護符にもなるとされていたんだ。別の伝承では、必ず当たる予言をするが予言してたちどころに死ぬ、とする話もある。また歴史に残る大凶事の前兆として産まれて、預言が当たれば死ぬともされていたから、すぐに亡くなった例が多いんだ。お前、何でも良いから預言してもらえ」
散々どうでも良い知識を披露された上に、何かさらっと「人身御供になれよ」的な事まで言われて、ようやく令が反論しだす。
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