崩壊

3/34
前へ
/271ページ
次へ
その仕草は私が知っている彩乃そのもので、私が儀式をしたのは無駄じゃなかったと、やっと安心出来たよ。 「私だけじゃないんだよ。南部君も心配して来てくれたんだから」 「えっ!?どうして南部君が」 驚いたように布団で胸元を隠して、視線をフラフラと泳がせる。 「山中さん、元気みたいだね」 私の隣にいた南部君がそう声を掛けると、恥ずかしそうに頬を赤らめる。 「菜々、潤だけじゃなくて俺も紹介してくれないか?」 彩乃が見えてないなら、向井さんはスルーしたかったのに、言われたら仕方がない。 「後……南部君の先輩の向井さん。色々助けてくれたんだよ」 「紹介に不満はあるけど、俺の顔を見られないとは可哀想な子猫ちゃんだ」 いつものように変な事を言いながらベッドに近付いて、彩乃の手を取る向井さん。 「助けて……って、何かあったの?」 素早く手を振り払って、私が言った言葉に興味を示す。 彩乃は覚えてないのかな。 自分の身体がドロドロに溶けて、この病院に搬送されたって事に。 「彩乃の身体が酷い事になってね、元に戻してほしいって願い事を叶えたんだ」 あの時は、それしか方法がないと思っていたから。 誰にきいても、他の答えはなかった。
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2444人が本棚に入れています
本棚に追加