2444人が本棚に入れています
本棚に追加
二人は悩んでいる様子で、私がいるというのに目に入っていないみたいだ。
「だったら、残された手段は一つしかないな」
口を開いた向井さんに、南部君が頷く。
「分かってますよ。……が、……を……」
あれ?声が聞こえなくなってきた。
それだけじゃない。
二人の姿がなくなって、私の姿も見えない。
ただ、深い闇がそこにあって、私の意識も薄れていく。
ぐっすりと眠る事が出来たのだろう。
次に気付いた時には、私を呼ぶ声が聞こえた。
「……菜々、まだ寝てるのかい?お目覚めのキスが必要なのかな?」
この声は……向井さんの声?
目を開けてみると、私の部屋じゃない、白い天井が見えた。
視界の中に、向井さんもいる。
……えっと、ここはどこだったかな。
私の部屋じゃない事は確かなんだけど。
どれだけ眠っていたのか、頭の中がボーッとしている。
上手く状況が把握出来ないけど、上体を起こした私はいつもとは違う感覚に包まれていた。
「やあ、おはよう子猫ちゃん。気分はどうかな?」
広い部屋に私と向井さんの二人きり。
そういえば、南部君の姿が見えない。
「……南部君は?」
向井さんは、何も答えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!