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余計な犠牲は出ないにこした事はない。
向井さんがお世辞で言ってるならなおさらだ。
「ありがとうございます。でも、危ないと思ったら、本当に私から離れてください。お願いします」
チラリと向井さんを見てみると、困ったような表情を浮かべている。
普通なら死にたくないだろうから、そう言われたら安心すると思うんだけどな。
それなのに、悔しがってる向井さんは変わってる。
「悲しいじゃないか。俺はただ、菜々と一緒にいたいだけなのにな。生きていても死んでしまっても、それは変わらないさ」
そこまで言ってくれるなんて……。
最初は向井さんの事を、ただの軽い人だと思っていたけど、一緒にいるとそうではないという事が分かる。
口では簡単に恥ずかしいような台詞を言うけど、態度はそうじゃない。
性格に難はあっても、芯の部分は誰よりも友達想いで、それを曲げないしっかりした人。
そんな向井さんだからこそ、巻き添えをくらわせたくないのだ。
これ以上私が何を言っても聞いてくれそうにない。
それが分かっているから、私は一つの事を心に決めた。
私の身に何か起こりそうだったら……一人で受け止めようと。
下手に足掻いて、向井さんまで巻き込む事がないように。
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