誘惑

4/27
前へ
/271ページ
次へ
家に帰って御飯を食べて、お風呂から上がった時にはもう19時を回っていた。 彩乃にあの話を聞いてから、やけに時間が気になってしまうけど、本当に願いなんて叶うのかな? 台所で冷蔵庫から牛乳を取り出して、それを飲んだ私は、ママに勉強しろと言われないうちに部屋に戻った。 机に向かい、数学の教科書を開いたけど……どうも勉強する気にはなれなくて。 シャープペンシルを鼻と口の間に挟んで、充電中の携帯電話に目をやった。 あれ?光ってる。着信があったのか。 家に帰ってから電話してくるなんて誰だろう。 なぜか毎日電話してくる、同じクラスの南部君かな。 そんな事を考えながら携帯電話を操作してみると……違った、彩乃だ。 着信があったのは18時57分で、一体何の用だったのかが気になる。 彩乃にリダイヤルして、携帯電話を耳に当てた。 トゥルルル……。 トゥルルル……。 二回のコールの後に、ガサガサという雑音が入り、彩乃の声が聞こえた。 『もしもし?奈々?私、実は忘れ物をしてさ。今、学校に向かってるんだ』 そう言った彩乃に、私は首を傾げた。 もしかして、それを言う為だけに電話を掛けて来たっていうの?
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2444人が本棚に入れています
本棚に追加