誘惑

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勉強を……小説を読み始めて、気付けば20時。 彩乃から連絡がないって事は、願掛けも成功したのかな。 そんなおまじないで本当に頭が良くなるなら、高校入試の前にやってみても良い。 読んでいた小説も、いよいよ佳境に差し掛かって面白くなって来た。 「おお、ここでこいつが……」 ワクワクしながら、次のページを捲ろうとした時だった。 ピロリロリン。 ピロリロリン。 あ、携帯電話が鳴った。 この着メロは南部君。 毎日電話してくるから、分かるように適当な着メロにしたんだよね。 小説を机の上に置き、携帯電話を取って通話ボタンを押した。 「もしもし、今日は何?」 『森川さん、今暇?』 まあ、暇と言えば暇なんだけど、小説を読む前に掛けて欲しかったかな。 こうして話をしていても、小説の続きが気になって仕方がない。 「忙しくはないけど、何か用?」 このやり取りは毎回してるような気がするなあ。 そうして、どうでも良い話が始まって、私はそれにうんうんと相づちを打つだけ。 南部君、毎日話が長いんだよな。 聞いてる内に眠くなって、良い具合に寝る事が出来る。 その点では、凄くありがたい存在なんだよね。
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