たーくん

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 二ヶ月前。姑が来る日、運悪く夫は仕事で家にいなかった。それでもいつものように息子と三人、楽しい時間を過ごしていた。  ――ピンポーン。  インターフォンが鳴り息子を姑に任せて玄関へ向かった。町内会の回覧板。それを受け取り二人が待つ部屋に向かう。 「ハイ、たーくん。バァカて言ってみて」 「バァ」 「おしいわね。バァ・・・じゃなくてバァカよ。ママはバカ」 「マァ・・・バァ・・・」 「もう、ダメな子ね。じゃあ・・・シネ・・・は?」  私は自分の耳を疑った。普段の優しい姑からは想像することすらできずに驚き、どう言葉をかけて良いのかも分からなかった。 「アラ?美穂さん。もう良いの?」 「す、すみません。回覧板でした」 「そう」  立ち尽くす私に気付き、姑は何事もなかったように笑顔を見せた。そうして、何事もなかったようにその日を過ごした。いつもなら一泊するが、夫が帰らないと知るとその日は帰った。
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