0人が本棚に入れています
本棚に追加
「爆ぜよ! ウィスプボール」
突き飛ばそうとした手に私は魔法を当てる。その後にブラックがグーで鳩尾を殴る。
「ブラック! 後ろに下がって!」
「分かった」
下がってきたブラックと手を繋ぐ。思念が怯んでいる。今がチャンスだ。
「ブラック。あいつの弱点、コアは頭にある」
「なぜ分かった」
「ブラックが殴った瞬間に見えたの。上から魔法で叩こう?」
「ああ!」
影が迫ってくる。大丈夫。これだけ力が満たされていれば攻撃受ける前に倒せる。
「いくよ、ブラック!」
「ああ!」
「ルミナス☆ルミエール!」
空が光る。うめき声が聞こえる。影は頭から光の中へ溶けていった。
「ほら、持っててよかったじゃん、瑠美」
タカナシ雑貨店。戦ったら必ずここに報告をする決まりになっているのだ。
一緒に戦ったはいいが、ここにきて報告をするとなると本当に気まずい。明日香は一言も話さないから余計に息苦しく感じる。
「格さん。でも、私は」
役立たずだから。途中で投げ出したから。ここに立つ姿勢としてはおかしい。そう言おうとしたのに、格さんは、言わせてくれそうにもない。
「何言ってるんだ。瑠美と明日香だからルミアス。でも言いにくいから、ルミナス。誰だ、名前をつけたの」
「私です」
「二人がいなければ、ルミナスは成り立たない。そうだろう? 瑠美」
考えてしまう。私がいなくてもきっと明日香は戦える。今回の敵が強大だっただけなのかもしれない。それに、これがあれば私以外の人でも戦うことはできる。私は明日香の足を何度も引っ張ってしまったのだ。今回たまたま上手くいっても次どうなるか分からない。
「私はあんたの相棒として戦いたい」
ぼそりと明日香がそう言った。思わず目を丸くしてしまった。私は明日香を凝視する。一週間前、一人で戦えると言った明日香のセリフとは思えなかったからだ。
明日香がそっぽを向いた。照れているのだろう。確かに後方でしか戦えない私は弱い。
「ごめんね。勝手に離脱して。これからはそんなことしないから」
けれど、彼女の言葉はいつも真っ直ぐで嘘がない。だから、もう一度、明日香と頑張ってみよう。
心なしか、明日香の横顔が少しだけ綻んだ気がした。
最初のコメントを投稿しよう!