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『タカナシ雑貨店』
小さな雑貨屋に今日は用事があった。店主、鳥遊里格(たかなしいたる)は今日も暇にかまけてお昼寝中らしい。相変わらずだが、この人は万引きされることを心配していないのだろうか。
「格さん、万引きされますよ」
「ああ、瑠美。僕は超絶眠いんだ。このまま寝かせてくれ」
「永遠に、ですか?」
「そんなに寝たら、骨にされるじゃないかあ」
「今、仕事中ですよ?」
「メカいじりの方が本業さあ」
「いいから起きてください」
カウンターを、思いきり叩いた。音に驚いたようで、格さんが目を開ける。格さん、そうとう気持ちよく眠っていたみたいだ。口からよだれが垂れている。汚い。
「で、何のよう? ルミナス☆ホワイト」
「私はもうルミナス☆ホワイトではありません。ただの羽崎瑠美です。これ、お返しします」
鞄から鍵を取り出した。これは、どこかの鍵ではない。何か特別な機械らしい。仕組みは全く分からないが、これがあれば、人が産み出した負の思念、平たく言えばモンスターと戦うことができる。どれもこれも巨大で自衛隊や、警察ではどうにもならない。だから、格さんが自分の趣味で作った鍵を人に押し付けて魔法少女として戦わせているのだ。
「今日、明日香に返されたんだろ、それ。明日香が一緒に戦いたいって思ってるんじゃないか?」
「格さんが、私に渡せって言ったんじゃないんですか? 私を戦わせる為に!」
「まあ、それもあるけど」
「それに、ルミナスは明日香一人で十分じゃないですか! 私なんかいらないんじゃないんですか?」
「この鍵は二つで一つだ。瑠美と明日香、二人揃ってやっと強い力が出る。そう説明したはずだけど?」
確かにそう言われた。けれど、明日香は言った。「あんたがいてもいなくても同じだ」と。
明日香は口数が少ない。少ないからこそストレートな言葉をぶつけてくる。この言葉が表しているのは彼女の本心。私はずっと役立たずだと思われていたのだ。それなら、私がこれを持つ必要、いや、資格はないのだ。
「とりあえず、一週間だけ持っててくれないか? 僕が持ってても何の意味もないからねえ」
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